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序章

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 おや、これは珍しい。この先進大陸にもまだ、老いぼれに気をかけてくださる方がいるとは。

 いえね、今日は大切な人の命日でして。いろいろなことを思い出しておりましたらつい。年を取ると涙もろくなるものですねえ。

 あ、ちょっとあなた。待って。待ってくださいよ。

 親切ついでに一つ、この年寄りの話を聞いてくださいませんか。何せ息子どころか縁者もいない異邦人ですから、冥土へ着く前に、どうしても誰かに聞いてもらいたい話があるんですよ。これも何かの縁だと思って、ね。

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 ああ、ありがとう、ありがとう。そうだ、酒をおごりましょう。いくらだって飲んでくださいな。今夜だけは私を親と思って、遠慮などなさらずに。

 その代わり、あなたを……いいえこれは行き過ぎたお願いですね。忘れてください。

 ただ私の思い出話を聞いてくだされば結構。何せもうろくしておりますし、聞き苦しいこともありましょうがご勘弁くださいね。

 とはいえ、まずは何から話したものでしょう。

 はあ……。
 ええ……。

 そうですね、時系列に話を進めるのが一番だ。

 まずは、私のおじいさんやおばあさんが少年少女だった時代の、ウト・ピアの話から始めましょう。

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