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鳥のような少女

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 さて、それから数十年後のお話をしましょうか。

 ウト・ピアで物心着いた頃から大工をしていた少年は、青空を颯爽と横切る黒い鳥を見て呟きました。

「そういえば最近見ねぇなぁ、アニータ」

 すると、隣で工具をまとめていた父親が振り返りました。

「ああ。なんかずいぶん前に父親に引っ付いていって、アモーロートの市場ではぐれてそれっきりらしいぜ。

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すげぇ人混みらしいからな、見つからなくても無理はねえ」

 ガルショー夫妻、つまりアニータの両親は一人娘を失ってからというもの幽霊か何かのようにしていたのですが、そのうち彼らも村から消えていました。
 娘を探しに行ったのか、悲しみのあまり果てたのか。誰も知りませんでした。

「あんまり働き者じゃかなかったが……可愛い子だったからなあ、お父さんもお母さんもすっかり肩落としちまって。可哀想になあ」
「本当、きれいだったもんな、アニータ」

 目を閉じればぱっと浮かび上がるほど、アニータは鮮やかな少女でした。

 肌の色はアコーラ人にはない白っぽい砂色で、まだ幼いのに手足や首は細く長く、小さな顔には大きな瞳と長いまつげが備わっていて、鼻筋も高く唇は野薔薇の色でした。

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