でもそれより何より人目を引いたのは、長く豊かな黒い巻き毛です。彼女が自分の歌に合わせて踊ると、艶やかな髪はそれは楽しそうに弾むのでした。 アニータは歌ったり踊ったりすることが大好きでね。働いている姿なんかほとんど見かけませんでした。 「しかし、お前今更なんでそんなこと言い出すんだ。チェン、まさかお前、好きだったのか?」 少年は弾かれたように大きな声を出しました。 |
「オレはあの子と話したこともねぇのに」 父親は笑いながら木材を肩に抱えて運んで行きました。残されたチェンは、いまさらながら自分の出で立ちを見下ろします。 彼はアコーラでは最も平均的な肌の黒い民族でした。その上、元の色が分からないほどオイルやニスの染み込んだ、ボロボロの作業着を着ています。それだけでも十分過ぎるほど黒いのに、一日の尊い仕事が終わる頃には、泥やら汗やらで頭からつま先まで余計に黒くなってしまうのでした。 「なんだよ。自分だって真っ黒じゃねえか」
ずんずんと力強く去っていく父の背中にそう吐き捨てたものの、チェンは黒く汚れた自分を誇らしく思っているのでした。 |
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