ずっとずっと自分一人の心の中に大切にしまっていた女神がこんな姿にされて、飛ぶこともできずもがいていたなんて、チェンには我慢なりませんでした。 まあここだけの話、子供扱いされたことや無視されたことにも腹が立ってたんでしょうけど。 「飛ばねぇだろ……この船さ。飛ぶわけないよな。こんな余計なもんぶら下げてりゃな」 嫌味ったらしく言ってやると、少年は振り返りました。両目をかっと見開いて、月明かりでも分かるほど、顔を真っ赤にしていました。 「お前には関係ないだろ! もう帰れ! ほっといてくれ!」 怒鳴り散らす少年を遮って、チェンは相手を睨みつけました。 |
一瞬怯んだ少年に大股で近寄ると、チェンはその細い手首を掴み、船に付けられた車輪の前へと引きずり出しました。 「このテキトーな車輪、付けたのお前だろ? 全然なってねぇよ。この船作ったやつはどこにいる? なんでお前がこんなもん持ってるんだよ」 少年は精いっぱい手を振り払おうとしましたが、結局チェンが力をゆるめてやるまで抵抗もできませんでした。 「お前本当に何も知らないんだな」 少年は握られた部分をさすりながらチェンを見上げました。 「これは俺のじいさんの船だ。車輪を付けたのは親父だって聞いてる。壊れたとこを直したのは、確かに俺だ」 |
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