「あんな重たそうなもの、どうやって?」
「問題ない。機械がやってくれる」
「キカイ?」

 その言葉はひどく懐かしいような、怖いような。チェンはそんな気がしました。それが何なのか、どこで耳にしたのか、そこまでは思い出せません。ただ幼い頃にうなされた悪夢みたいに、もやもやと形なく胸に漂いました。

「まあとにかく、ついて来い」

 少年は糸巻きから綱をほどき、自分の腕や肩に巻き付けていきました。
 少しずつほどきながら船まで運ぶつもりなのでしょうが、必要な長さの綱を巻き付けた少年は、ふらふらして顔を真っ赤にしていました。

「……オレも持つよ」

 そして二人は鋼の綱をぶら下げて、船のところへ戻りました。

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 船尾には綱をかけるための引っかけ金具が三箇所あり、少年はそこへ綱を絡めていきました。

 その金具の大きいことに、チェンは目を疑いました。
 ウト・ピアほどの田舎には鋳造という概念がなく、鉄の加工と言ったら熱して打つくらいしか方法がありません。だからこんなに大きな鉄の部品があることが信じられなかったのです。

 チェンが見守る中、少年は無事に綱をつけ終えました。

「さあ、地下に戻ろう」

 丘の中の暗闇へ戻ると、少年は壁から飛び出したレバーをいくつか操作しました。

「……なんだ?」

 ランタンを手にその作業を眺めていたチェンは、ふと奇妙な音に気づいて辺りを見回しました。

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