ランタン一つでは照らせないほどの空間。そこには、甲高くか細い金属の振動音が響いていました。
 始めはかすかな音だけでした。やがて何かの金具が外れたような気配がすると、辺りは一気に騒がしくなりました。

 鋼のこすれ合う耳障りな音。やかんから蒸気がもれる時によく似た、笛みたいな音も聞こえました。たくさんの歯車が噛み合う音はまるで獣が唾を飲み込むようにごくん、ごくんと鳴っていました。

 そして部屋の中央に置かれた巨大な糸巻きが軋みを上げると同時、地面にたわんでいた鋼の綱がぴんと張りました。そして、誰も触れていない糸巻きが、勝手に回り始めるのを見たチェンは肝をつぶしました。彼の故郷では、こういうものはもう使われていなかったもんですから。

「えっ……? え? どうして?」

 チェンはびっくりして、少年と糸巻きとを交互に見ました。

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「電気って言うらしい」

 少年はそう言って、月明かりのさす入口を見つめていました。キリキリと音を立てながら、綱はどんどん巻き上げられていきます。

「俺の親父は、発明家だった。自称だけどな」

 船が倉庫へ戻るまでの間、少年は彼の父親の話をしました。

 おじいさんから教えられた技術を学び、たくさんの機械を作ったこと。機械を動かすため、昼の暖かい太陽のエネルギーを電気に変換し、蓄積する方法を見つけたこと。
 そして彼が作ったたくさんの機械を集めた工場が火事になり、責任を問われて……亡くなったこと。

 そんな話をするうちに、立派な船尾が見えてきました。

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