ところがそのガラクタ、空飛ぶ船――まあ、空を飛びそうな船、ですが――が、目の前に現れたわけですから。 当然、チェンはこの機会を逃すわけにはいきませんでした。 「いや。どっから手ぇ着けようかって、考えてた」 結果、チェンが口にしたのはそんなひねくれた言葉でした。 「何のことだ?」 真面目腐ってそう言うと、チェンはじっと、暗がりの中の船についた車輪を見つめるふりをしました。お前に触らせるわけないだろうとか、そんな風に言われたらどうしようと、内心穏やかではありませんでした。 そんなチェンの心配をよそに、少年は小さな笑い声をもらして言いました。 |
「そうだな。お前、そういうの詳しいんだったな。手伝ってくれるのか?」 少年の言うことはもっともでした。ウト・ピアの大人たちはみんな、この丘を無視することに決めていたんですからね。でもチェンは、父の言葉をしっかり覚えていましたから。 「平気だよ。オレ、こう見えてもう十七なんだ。一人立ちする年だ。いざとなったら家出してくるさ」 少年はふと、声のトーンを落としました。 「懐かしいな。アニータも、家出するんだって言ってたっけ……あいつ、どうしてるのかな」 |
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