「君ほどの美人に貰い手が付かないなんてねぇ。シェーラ、この村の若いもんの趣味は分からないよ」 そう言うこの老人は、元々ウト・ピアの住人ではありません。彼はある日突然やって来た、アモーロート出身の旅人を名乗っていました。 アモーロートとは、アコーラの最西に位置する巨大な城下街です。 当時のアモーロートは異国人の出入りが多い非常に栄えた街でした。 |
そんなアモーロートにあこがれるのは、ウト・ピアのような田舎に生まれ育ったシェーラにとって当然のことでした。 「私、お嫁に行くつもりなんかないわ。それよりおじいさん、今日は何を教えてくれる?」 老人はしかし嬉しそうに目を細め、一度背伸びをしました。 「じゃあ、西の大賢者の話でも聞かせようか――」 |
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