先進大陸で生まれ育った方には信じられないかもしれませんが、アコーラ王国には義務教育制度というものがありません。様々の知識を学ぶことができるのは、豊かな家に生まれた子供だけです。貧しい子供たちは親か奉公先の家から生活に必要な知識を学ぶだけ、それがこの国の常識でした。 だけどシェーラはそれじゃ満足できなかったんでしょうねぇ。 旗織り機の使い方より、遠い国の暮らしを。 でもね。あの丘の上の家からは、見渡す限り続く大地しか見えないんです。青い空や白い雲にまで触れてしまいそうなところまで続く、大地という鎖しか。 |
一体、どうやったら現実から逃げられるのか? シェーラがその質問をする前に、老人は亡くなってしまいました。 「ずるいわ。おじいさん」 煙りの行き先を見送ろうと、シェーラは涙を拭い空を見上げました。すると、何かが青空の中で輝いたのです。 一瞬我が目を疑ってシェーラは数度瞬きしました。でもやっぱり、遥か上空で何かが光っているように見えるのです。
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