老人の葬儀のために派遣された村の役人に教えると、彼らのうちの一人は、鳥だと言いました。また別の役人は、流れ星だろうと言いました。

 シェーラは納得しませんでした。鼓動が急に踊りだして、胸が締め付けられるように感じました。それは、老人から始めて外界の話を聞いたときのきらめきによく似ていました。

 シェーラは風船のように頼りなく進むその萌葱の光を追いました。楽ではありません。川をまたいで、林を越えて、光はどんどん流れて行きます。シェーラは髪が乱れるのも汗が滴るのも気にはしませんでした。ただその光を見失うのが怖かったのです。

 その瞬間に自分の人生は真っ黒な葬式用のレースを被るのだと、彼女はそう思いました。
 目の前に長く、霞むほど遠く続く未来に二度と手が届かなくなり、そしてこの堂々巡りの田舎暮らしの中で少しずつ擦り切れながら死んでいく――そう直感したのです。

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 そして酸欠を起こしたシェーラがめまいに負け、白んでいく意識を手放そうか悩み始めた頃。彼女は東の外れの森へたどり着いていました。
地平線へ向かって落ちはじめた陽がうららかに木々に射し込む中、緑の光も森の中へ沈みました。ついに、シェーラは追いついたのです。

 しかし喜びや期待を感じることはなかったでしょう。あまりに体が疲れすぎていたのです。彼女はすっかり傷だらけで、すねまであるスカートの裾もボロボロでした。長い金髪もぼさぼさでした。靴も擦り切れて、底に当てたゴムが片方剥がれかけていました。

 シェーラはただ無心に、倒れ込むようにして森へ分け入りました。初夏の葉を透けて、爽やかな緑の光線が彼女を優しく包みます。ふらつく足を引きずり華奢な木の幹にしがみつきながら進んで、ようやく、シェーラは見つけました。

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