「……もう、行くね」 色々気になることはありました。 でもアニータの体が離れて、彼女の目がゆらゆらと潤んでいることに気づくと、そんなことは全部どうでもよくなってしまいました。 なんとかしなくては。ノアは慌てて言葉を探しました。 「会いに行く……その……アニーのところに」 |
アニータが吹き出しました。元来の気丈な眼差しが一瞬だけ垣間見えた気がして、ノアはこっそり安堵の息をつきました。 「それは、素敵ね」 ノアは重ねてそう言いました。アニータはただただ微笑んでいましたが、それ以上は何も言わず、爽やかな夜風に髪をなびかせ丘を下って行きました。 「信じてくれ、アニー」もう聞こえないとは知りつつも、ノアはもう一度呟きました。 |
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